情報開示は「この情報は誰のもの?」という問いからスタートすべきなのですが、多くの場合は、既得権益者が「どの情報をどこまで開示するか?」という問いからスタートしているようです。これが本末転倒であることは言うまでもありません。開示側はできるだけ自分達のパワーの源である情報を開示したくないし、開示することで発生する説明責任も負いたくないわけです(時には、開示することで自分達の悪事がばれてしまうと心配している場合もあるでしょう)。そこで後者のような問いからスタートとなるわけです。日本は残念ながら、他の先進国(特に米国)と比べ情報開示において後塵を拝しています。今回の政府主導による情報開示も「やっと動き出したか」という感がありますが、better late than neverと言うところでしょう。しかし、日本の情報開示は始まったばかりで、既得権益者の意識改革までにはまだまだ時間が掛かりそうです。例えば、患者のカルテですが、日本ではカルテの情報を作成した医者が全ての権利を持っており、その情報の直接の利害関係者である患者の権利はいっさい認められていないのが現状です。このことが患者や社会全体にとっていかに不利益なことか、また、医者側にとってどれほど有利なことかは説明無用でしょう。

日本のビジネスで最近はやりつつあるコンセプトに「顧客中心主義」があります。これは今までの「いいものを作って売る」から「顧客のニーズにあったものを作って売る」へのシフトだと思われがちですが、それだけではまだ片手落ちです。つまり、買い手(顧客)からの情報(ニーズ)を得るだけではなく、売り手(製造、販売、サービス側)の情報も提供する必要があるのです。特に、売り手には買い手に価値を認めてもらうための情報提供を行う必要があります。そこまでやって初めて顧客中心主義を実践していると言えるのです。しかし日本では、これを実践しようとして製造業者側から訴えられた小売業者がいることは皆さんも新聞等の報道でご存知でしょう。薬の安売り○△が製薬会社×■から企業秘密(?!)である卸値を公開したとして訴えられている例のあれです。悲しい事に、この×■社のような感覚が日本の組織の大多数が持つものと言えるでしょう。

すでにお気づきの皆さんにはくどい説明になってしまいますが、Eコマースを含む全てのテレワークでは、売り手・買い手、または、評価する側・される側がお互いの必要な情報を開示しあって信頼を築くことが成功の前提条件となります。顧客に対する情報開示を徹底したEコマースのおかげで倒産の危機から大逆転の再起を果たした中古車ディーラーの例もあります。このディーラー(本社:沖縄県浦添市)は、顧客が購入したいと思っている車の全てのコスト(仕入れ価格や販売手数料を含む)やその車の問題点および修理個所などの詳細情報(つまり、通常の中古車ディーラーが顧客に隠している情報)を開示することなどで顧客の信頼を獲得して、わずか一年ほどで売上を約3倍に伸ばしたとのことです。また、この大成功をきっかけに、販売方法をEコマースに一本化することで在庫ゼロを達成し、その結果、不動産コスト、在庫車の資金、人件費を大幅にカットしているので利益率を考えると売上の3倍アップをはるかに上回るものになっているはずです。

情報開示を厄介で責任の重い事だけのものと取るか、それを自己評価と向上の機会と捉え、さらに存在の意義と市場価値を認めさせるチャンスとするかは、開示側の心がけ次第でしょう。どちらにしても、情報開示のうねりは、ますます大きくあらゆる業界に波及していく事でしょう(期待を込めて)。