以前この談話室で紹介した沖縄県浦添市の中古車ディーラー(ヒーローモータース)の城間勇清社長にヒアリングを行う機会がありましたので、この事例をもう少し詳しく紹介します。城間社長がインターネットによる販売に踏み切ったのが平成10年の12月。それまでは、バブルが弾けて以来の負債が4千万円に達し、このままでは倒産に追い込まれるというギリギリの選択だったそうです。従来の店頭販売方式の問題は大きく3つありました。一つは、仕入れ資金の金利、二つ目は不良在庫、そして三つ目は人件費でした。

この3つの問題を同時に解決する方法としてインターネット販売に踏み切ったわけですが、ただHPを開設して扱っている中古車の紹介をしたのでは他のディーラーとの差別化は出来ません。第一そんなことで売れるほど甘いものでもありません。そこで思い切って中古車販売業界の常識を打ち破る方法を取ることにしたのです。それが徹底した情報開示です。米国では信用できない人間の例えに「あいつは中古車ディーラーみたいな奴だ」と言いますが、通常のこの業界の売り方は、売り物の情報(仕入れ値、事故履歴、故障箇所等々)をできるだけ隠し、その情報格差を利用してできるだけ高く買わせるというものです。従って、それらの情報を全て客に公開してしまう売り方は業界の常識を打ち破るものだったと言えるでしょう。完全インターネット販売にして在庫ゼロにしたため、大問題の一つ目と二つ目は解決されました。また、店頭販売員と事務員を以前の半数(8人から4人)にすることができ、三つ目の問題も解決されました。

後は売上がどうなるかということですが、城間社長は、完全情報開示の他に顧客の信頼を得るために次の手を打ったのです。まず、買った車には一年間の保証をつけました。また、届いた車がネットで見た条件と違っていた場合、解約のペナルティなしで購入契約をキャンセルできるとしたのです。さらに信頼ある大手中古車卸し業者を利用する事で、それら業者の確立された信頼も利用することができるようにしました。この結果、各年3月期の売上は平成11年が7千万円、平成12年が1億6千万円、平成13年が2億3千万円と順調に伸びているとのことです。1台あたりの売上単価も平成10年が40万円台だったものが、現在は130万円台とのことです。この成功を妬んだ他の業者からの妨害もあるようですが、城間社長は業界の改革が必要として、この販売方式に反対している業者に対しては、直接面談して説得をしているとのことです。彼等は理屈は理解してくれるそうですが、今のところ従来の販売方式を変えるつもりはないようです。これは情報に対する既得権益と変化に対する畏怖と怠惰が如何に改革を遅らせているかを表す典型的な事例と言えます。テレワークの組織的取り組みで一番の問題となるのは既得権益にしがみつき、今までのやり方を変えようとしない人的障害なのです。

さて、それでは中古車ディーラーの業界はいつ頃この販売方式を業界スタンダードとして受け入れるのでしょうか?もちろん私は業界通でも業界人でもありませんので、まったくの素人考えですが、沖縄県の業界では、早ければ1年以内、遅くとも2年以内にはそうなるでしょう。本土の中古車ディーラーも3年以内にはこの販売方式に変えていくだろうと推測されます(明らかな競争優位性が認められる方式を採用しない業者は3年以内には淘汰されることでしょう)。しかし、もし業界が抵抗し続けるとどうなるのでしょうか。

それでも答えは同じです。この販売方式は他業界からの参入を比較的容易にします。この業界の従来からの体質や慣習を引きずらないぶん、他業界からの新規参入組は効率が良く、動きも速く、あっという間に市場を奪い去ってしまうことでしょう。従って、多少の遅れはあるかも知れませんが、結果は同じことになるだろうという予測になります。ただし、従来のような店頭での現物販売方式が全くなくなるとは思えません。将来は、どのような割合で2つの販売方式をミックスさせるのかが、業者の戦略計画の重要な要となっていくことでしょう。

因みに、ヒーローモータースのURLはこちらです。
http://www.hero-m.com/