大きな目標を達成するためのテレワークは気軽に始められるものではありません。また、気楽に始めたテレワークが規模の拡大につながり、目標達成に貢献するとも考えられません。テレワークの導入はあらゆる組織にとって革命であり、それなりの努力も、痛みも伴なうものだということを認識すべきです。どうも多くの企業では、意味のあるテレワークが正しく実施されたときに期待される効果を、とにかくテレワークをやりさえすれば、その効果が得られると勘違いしている向きがあるようです。日本でも大規模なテレワーク実施を行なう企業が出て来てはいますが、まだまだ大多数は社内の全ホワイトカラーの1%にも満たないワーカーが週に一回以下の頻度でテレワークしているといったところです。この様なごく小規模のテレワーク実験や実施から「テレワークはこうすればできる」とか「これがテレワークの限界だ」というような結論に至るのは極めて早計であると言えます。少数がパートタイムで行なうテレワークと多数がフルタイムで行なうテレワークは似て非なるものと心得るべきです。

大規模なフルタイムテレワークからのデータが絶対的に不足している現状からすると、テレワークに関する理論の確立にはまだ年月がかかりそうです。しかし、テレワークに取り組む組織はますます増えており、それらの組織からの有効なガイドラインへの要求は切実で急を要しています。従って、これから数回に渡って私のbest of knowledgeによるテレワーク予測(成功・失敗要因の予測)を述べていくことにします。これら予測の一つ一つは研究者にとって検証対象となり、また、発展研究の前提となることを期待しています。予測はできるだけ刺激的に(活発な議論を期待して)、かつ、分かりやすく書いていくつもりです。また、テレワークの成功要因は残念ながら良く分かっていませんが、こうすれば成功しないとか、これをやれば成功の可能性が大きくなるというようなことは幾つか見えて来ていますので、予測はそれらを基に行ないます。それでは今回は次の3つの予測です。(注:予測の中で「成功」という言葉を使いますが、ここでの成功は、テレワーク導入の目的を果たしたかどうかで見ます。また、達成度合いが計測しにくいような目標や目的が設定されている場合は、設定そのものが誤りであると判断します。)

予測1:組織上層部(役員クラス)のテレワークへのコミットメントを基にした強力なトップダウンによるテレワーク導入は成功への絶対条件である。これによらないテレワーク導入は、ほぼ間違いなく失敗します。組織レベルでインパクトのあるテレワークの導入は、経営トップクラスのコミットメントなくして成功するはずがありません。また、導入に際してもその上層部が直接参加した強力なトップダウンが絶対条件となります。上が理解していても、よく理解していない(或いは懐疑的な)中間層に導入の仕事を任せたのでは上手く行くはずがないのも道理です。実際にこのような失敗例はいくつもあります。その逆に私の知る成功例の全てはこの予測どおりの導入を行なっています。

予測2:ワーカーのためだけのテレワーク導入は成功しない。言い換えると「組織としてのメリットがはっきりしない導入は成功しない」ということです。90年代までの日本で行なわれたテレワーク実験や導入の試みの殆んどが「ワーカーのための」テレワーク導入であったこと。そして、それらの全てが成功していない事は周知の事実です。90年代後半から出始めた成功事例の全ては組織としてのメリットを全面に押し出したテレワーク導入ばかりであることも忘れてはなりません。多くのワーカーがテレワークでメリットを得るためには、まず組織がテレワークでメリットを得る事が前提条件なのです。

予測3:テレワークは誰にでもできる。基本的にテレワーク資質なるものは存在しないと考えるべきです。これまではワーカーのテレワーク資質なるものが実しやかに語られ、資質を調べるチェックリストやエキスパートシステムまで登場しました。しかし、ワーカーの資質調査に時間とお金をかけるのは「百害あって一利あり」くらいのものです。これに気を取られ過ぎると、かえってテレワーク導入の弊害になります。ただし、テレワークに不向きなワーカーはいるでしょう。しかし、これは遅刻や無断欠席を繰り返すワーカーがいるのと同じ程度の問題だと考えるべきでしょう。

次回の予告:
最後の予測には更なる補足の説明が必要ですが、それはこれから徐々に行ないます。実は、本当に深刻な問題なのはワーカーの資質ではなくマネージャーの管理能力の方なのです。といっても中間管理職者の非難をするつもりはありません。テレワークの導入は40代、50代の管理職者にとっても最後のビッグチャンスになり得るのです。。。。と次回の予告はここまでです。それではまた1~2週間後に!