予測9:従来の階層型組織とFTFを基本にした仕事の仕方ではKMやOMのシステム導入は成功しない。

組織が存続し、活動するためには様々な種類の知識が必要であり、組織が成長するためにはそれらの有効活用と更なる知識の獲得・創造が不可欠であると言われています。それらの知識を総称して「組織知」(OM:Organizational Memory)と呼び、OMを組織の重要な資源の一つとして管理しようという動きが1990年初頭から米国で始まりました。日本でも2000年頃からKnowledge Management(KM)という名称でブームが起きました(それ以前から一部の企業では野中先生の「知識創造モデル」を熱心に研究してはいましたが)。現在では多くのKMシステムやOMISが開発され企業に導入されています。しかし、欧米や日本でも成功に至るケースはほとんど出ていません。何を以って「成功」とするかという議論はさておき、実際に同業他社が一斉に真似をするような事例が出ていない(私が知らないだけかもしれませんが(^^;)ことからもお分かりいただけると思います。これは何故でしょうか。理由は幾つか考えられますが、最も大きな問題はOMの獲得方法にあると思われます。既存のOMISではOMの活用方法に重点を置いているものがほとんどです。組織にとってOMISの構築に投資する意義は、当然OMの利用にあるわけですから当たり前の結果のようですが、ここが大きな落とし穴になっているようです。OMはデータベースと同様に常に更新されることが利用価値を保つために不可欠なのですが、既存のOMISでは、このOM更新の過程がサポートされていないようです。例えば、営業部門でOMISを導入すると良く起こる現象は、過去のRFPへの提案書や営業日報などを電子化してそれらをOMとすることです。もちろん、それらの電子化は意味のあることではありますが、本来OMISに期待していたような効果は出てこないでしょう。つまり、それらは過去の点の情報であり、現時点での状況や脈略などの情報が抜けているのです。そして、それら抜け落ちている情報をOMISに入力するよう現場のワーカーに要請することが多いのですが、彼らにとっては入力作業は余計な負担でしかなく、それを行ったからと言ってワーカー個人の評価が高くなるわけでも昇給があるわけでもなく、まして、行わなかったからと言って業務の遂行に支障をきたす訳でもありません。これには2つの問題があると思われます。まず上司の問題です。口頭や紙ベースでの報告を毎日求めた上で日報の電子入力も要求したり、電子メディアでタイミング良い指示出しや応答ができなかったり、電子日報の質や入力のタイミングに関する賞罰を行わなかったりすることは、上司の怠慢であり管理能力の欠如をあらわすものです。2つ目は、FTFコミュニケーションの機会が豊富にあり、それに依存することによりワーカー自身がOMの価値を見出せない状況にあることです。つまり、従来の階層型組織における目視管理の幻想と高コストのFTFコミュニケーション機会が豊富にある限りKMやOMのシステムが根付くことは非常に困難と言わざるをえないでしょう。従って、組織構造と仕事の仕方を変えない限り知識知を蓄積し活用するためのOMISの成功はありえないのです。