「人事を尽くす...」シリーズの最終回です。政府は企業の業績回復に意図的な物価上昇策を採ろうとしているようですが、これは天の仕事の領域に入り込んでいるように思われます。人間は過去にも制御できもしないことを頭だけで計算して思い込み でやって失敗するということを繰り返してきました。科学の発達した現在でも、人間の制御できないことは数多くあります。経済(景気)もその一つです。それを直接制御するためにインフレという怪物を使おうと言っているような気がします。それにもう一つ、もっと大きな心配があります。それは、物価上昇策では必要な組織改革が進まないということです。万が一間違ってその策で業績が回復したとしても、それが長続きすることはまずないでしょう。日本全体の絶対必要な改革を更に遅らせてしまうだけです。例えて言って見れば、頭を打って脳内出血を起こしている患者の外傷の止血だけをして手当てをした気になっているようなものです。景気そのものをどうにかしようとするのではなく、消費意欲を刺激することが景気回復の鍵ではないでしょうか。政府が出来ることは、例えば、消費税を時限付きでゼロに引き下げるとか(国会の仕事?)。これは確実な消費刺激策ではないでしょうか。と言ってもこれも期間限定の効果でしょうけど。

また、専門外のことに口を出しているので、この話しはこの辺にして、組織改革の話しに戻りましょう(それも私の専門外ですけど(^^;)。

現在日本で実施・検討されているリストラ・ワークシェアリング・物価上昇は、いずれも組織改革を遅らせる大悪策といえます。価格を下げれば売れることは実証済みなので皆こぞって価格を下げているわけです。ここで問題なのは価格が下がっていることではなく、従来の高コスト構造を引きずったままの組織で価格を下げていることなのです。コスト構造の改革を進めたところは収益増、そうでないところは収益減というふうに明暗がはっきり出ています。でもユニクロやマクドナルドも収益が落ち込んでいるじゃないかと反論される方もいらっしゃるでしょうが、それはまったく別の話しです。ユニクロの場合はビジネス上の戦略の問題であり、マクドナルドは狂牛病騒動と円高の影響であって、低価格化が原因ではありません。原材料から流通のコストまでをSCMで徹底的に効率化すると共に、ほとんどの組織にとって最も大きな固定費である人件費の効率化を図ることが、あらゆる組織において最重要課題です。前者のSCMには組織間のテレワーク、後者の人件費の効率化において組織内のテレワーク化が有効です。

ちなみに前回米国のKマートが倒産した話しをしましたが、報道などでは景気後退や同時多発テロの影響でクリスマス時期の消費が回復しなかったことを直接の原因としていました。しかし、それらは倒産の本当の原因ではないでしょう(吉野家のときと同じです)。仮にクリスマス時期の消費が回復していてKマートの収益が期待通りだったとしても、それは単なる延命にしかならなかったはずです(もちろん、延命できた期間に改革を進めて再建する可能性はあったでしょうが)。同時期に同業のウォールマートは業績を伸ばしています。だから景気後退やテロが原因ではないと言っているのです。実は、14年ほど前はKマートとウォールマートは立場が逆でした。前者は業界最大手の大人で後者はそれに比べればひ弱な子供と言ったところでした。ところがウォールマートは徹底したSCMによる合理化と効率化でコスト構造改革を行い、価格低下を成功させたところ、マーケットシェアと業績を急激に伸ばしたのです。これに驚いたKマートは急いでSCMの導入に走ったのですが、明らかに何かが違っていたようです(モバイルワークを正しく行っているところと形だけ真似しているところの差と似たようなものでしょうか)。ウォールマートはあっという間にKマートに追い着き、そして抜き去りました。最後は皆さんご存知の結末です。つまりは、ビジョンを持ち、それに向かってコミットしている組織が行う改革は真の改革であり成功する確率が高く、そうでない組織の改革は形骸化してしまうということでしょう。

次回は、組織としてのビジョンとコミットメントについて話したいと思います。