私の所属するCRAFTという研究センターは「理財工学」を主な研究テーマとしています。これは一般的に金融工学として知られているものですが、CRAFTは他大学の金融工学研究センターとは性格的に大きく異なっています。CRAFTは「正直者が損をしない社会をつくる」を基本理念として研究活動を行っています。つまり、公平な立場で各々の提供する価値だけで勝負できる社会造りを目指そうというものです。CRAFTでは組織間、組織内、組織・顧客間に存在する情報の非対称性を不平等の根源とし、それを解消するためのシステム構築と普及、およびその様なシステムにおいて必要な要素技術の開発を行っています。例えば、白川教授のグループがウェブ上で無料公開しているCRAFTスコアリングというシステムは、中小企業が自社の財務データを入力することで分析結果を得られるというものです。同様な分析を専門家に依頼すると高額な料金になるため中小企業の経営者からは魅力のあるサービスとなっていますが、CRAFTの意図はその様なサービスを財力的に弱い中小企業に無料提供することだけにはありません。もう一つの(本来の)意図は、多くの実データを集める事で中小企業に対してもより正確なリスク評価が行えるようになり、その結果、中小企業への投資・融資などを公平に行うことを可能にしようというものです。現状は中小企業のリスク評価は困難であり、その事が大企業との投融資上の不公平さにつながっているわけです。無料の分析サービスは上質の実データを効率的に集めるための手段でもあるのです。つまり、このシステムは公平な投融資システムへの第一歩なのです。

私の研究分野は理財工学ではないので、何故CRAFTに属しているのか聞かれることもありますが、実はこのCRAFTの理念に共感して2年半前に参加したのです。私の目指すテレワークによる新しい社会も正に「正直者が損をしない社会」なのです。比嘉研のHP上で公開しているテレワーク評価のシステムもCRAFTスコアリングシステムと同様な目的を持ったものです。テレワーク導入企業へ無料の自己評価システムを提供することでより多くの実データを得、そのデータを基により正確な評価が行えるようになり、そのことで正しいテレワークの導入方法が確立され、テレワーク社会への道筋をつける助けになればと考えています。テレワークを導入している企業の皆さん、どしどし使ってください。また、評価システム自体へのご意見もいただければ、より良いシステムへの改善につながりますのでよろしくお願い致します。

最後に、CRAFT理念の提唱者であり、私の盟友である白川浩教授が去る16日に他界されました。この一週間は脱力感から仕事が手につきませんでしたが、いつまでもこんな状態では怒られてしまいます。白川先生の御逝去を悼み、ご冥福をお祈りすると共に我々の理念を達成するために鋭意努力していく事を誓います。テレワーク社会実現のために皆様のご支援をお願い致します。