前話の続きです。
信用確立も価値確立もI期を飛ばして始めることは可能でしょうし、それぞれIII期まで到達する必要もないでしょう。つまりは、E-コマースを始める際の信用・価値確立の初期状況と目標設定によるということです。また、どこからどのように始めて、どう進めるかも戦略によって決まるでしょうし、その具体的な方法が戦術となるわけです。以前にも書きましたが、ここで提案したモデルを使うことにより成功・失敗の理由や予測の7~8割が説明できるのではないかと期待しています。既存の成功要因を使ってもせいぜい5割どまりでしょう(つまり、まったく理由付けも予測もできないということです)。従って、7~8割の説明ができれば手始めとしては大成功だと思っています。それでは、ある現在準備段階中のE-コマースの事例をこのモデルを使って分析し、成功の予測をしてみましょう。

コロッケA屋は、地元の大手スーパーで揚げたてコロッケを売って大変な評判を得ています。コロッケは毎日完売しており、わざわざ隣町からも買いに来る客がいるほどです。一個100円のこのコロッケは海洋深層水を使っているのが最大の特徴です。今回このコロッケを冷凍食品としてネット販売することになりました。値段は一個100円で、出店は楽○○場にする予定です。既存の成功要因も一応カバーしているつもりです。さて、A屋のE-コマースの試みは成功するでしょうか?もちろん、いくらモデルがあってもたったこれだけの情報で予測するのはほぼ不可能と言えます。しかし、この無謀なチャレンジをしてみましょう。A屋は地元スーパーで成功しているわけですから実店舗があって実績がある状況と言えます。そして集客力の高い楽○○場に出店することから信用確立のI期はかなりのレベルでクリアしていそうです。では、価値確立のI期はどうでしょうか。信用確立I期からの効果を内部入力として利用できそうです。さらに、「海洋深層水」が一般的に知られてきていることと、他県のコロッケ屋が簡単に真似できないことから差別化は出来そうです。健康食品ブームも追い風になりそうですが、揚げ物ということで相殺されそうです。

一見価値確立I期もクリアしていそうですが、問題はまだ残っています。まず、調理されたもの(揚げたもの)が高い評価を受けたからといって冷凍ものが同じ評価を受ける保証はないということです。A屋の冷凍コロッケをネットで購入した客が自身で調理して特に美味しいと思わなければ、メリットは「海洋深層水」を使用しているという一点になってしまいます。次に問題となりそうなのが値段です。調理済みと同じ一個100円ということですから、地元の客はまずネットでは購入しないでしょう(地元の客にとっては付加価値はマイナスですから)。他の客にとってもオリジナルの味を知らない状態で一個100円の冷凍コロッケは適正価格なのかどうか疑問が残りそうです。信用確立I期の効果と「海洋深層水」の効果である程度の初期売り上げは見込めそうですが、そこで価値を認めてもらうことが出来なければII期に進むことは望み薄と言えます。そして、仮に価値確立I期もクリアして、無事信用・価値確立II期に進むことができたとしても「海洋深層水」の他県(また同じ県内の他店)からの競争参入が(A屋が価値確立I期をクリアした後では)比較的簡単にできそうです。そうするとA屋には先行した有利さがあるのかということになりますが、恐らく期待できないでしょう。それでは、信用・価値確立II期で競合他店との差別化が図れるかということになりますが、現時点ではまったく予測できません(A屋自身II期に何をやるかまったく予定がないので)。と言うことで、前途洋々とは行きそうもない、むしろ前途多難な予感がします。一個100円の冷凍コロッケを客自身で調理したものを食べてどう評価を下すのかに掛かっていそうです。

私のA屋へのアドバイスは「価値確立I期をクリアするための戦術をしっかり立て直せ」ということと「少なくとも信用・価値確立II期の戦術案くらいは考えておくべし」ということです。コンサルタントとして雇われているわけではなく、単なるお節介な話をしているだけですから、この辺でやめておきますが、ここで予測したことは既存の成功要因だけでは出来ないことがお分かりいただけると思います。