地域活性化という課題は、単なる地域経済の問題ではなく、地方の自立へ向けての最重要課題となってきています。今回のシンポジウムは、そのテーマのもと、初の午前・午後の二部構成で行われました。当日は朝からあいにくの雨で、参加者の出足が心配されましたが、午前の部で三十人弱、午後の部は五十人弱の参加者があり、約二時間のディスカッション・セッションもあっと言う間に終わってしまう盛り上がりぶりでした。

今回のシンポジウムでは、全国の公的インキュベーション施設で、テレワークを活用しているところを対象にした調査発表や、成功している施設の管理者による講演と会場参加によるディスカッションを行いました。午前の調査発表や、午後の各講演内容は、インキュベーション施設の管理・運営上の問題点や、その解決方法についての話が中心であり、「テレワーク活用」部分が見えないという質問が、ディスカッション・セッションの時間にありました。実は、この様な質問は毎回あるのですが、各発表時間が限られていることもあり、講演者には、あえてテレワークとの関連性を強調した話にして欲しいというお願いはしていません。その関連性については、ディスカッションの時間に質問に答える形で説明しています。そこまで疑問に思っていてもらった方が、説明への理解も早く、印象に残るだろうという思惑もあります。ちなみに、地域活性化を目的としたインキュベーション施設が、テレワークをキーワードとすべき理由は、幾つかありますが、その最大の理由は、地元に定着して外貨を稼げるような人や事業を育てるには最も有効な方法だと言えるからです。もちろん、(大企業でもない限り)全国を相手にしたプロモーションや受発注を行うためにもテレワークによる仕事の管理ノウハウが不可欠となります。

さて、今回のシンポジウムで私を含め、多くの参加者が答えを見つけ出したいと思っていた二つの疑問がありました。その二つとは、「成功するための施設管理・運営とは?」と「行政の役割は?」です。一つ目の疑問に対する答えは、「ビジネスセンスのある、やる気と行動力のある管理者を見つけ、その人に管理・運営を任せること」となりました。ビジネス経験のない行政マンが管理者になったり、いつでも管理者室にいて、定時勤務だけするような行動力もやる気もない管理者では、施設の成功はほとんどあり得ないと言うことです。更に、私が感じたのは、成功している施設の管理者の主な仕事は、「施設管理・運営」ではない、ということです。施設の広報、入居者等からの相談を受け、問題解決への提案とフォロー・スルーを行い、入居者間のコミュニケーションを促進し、外部への営業活動も行うという、言わばソリューションマネージメントと呼ぶべき仕事が主な仕事となっています。「施設管理者」という呼び方から誤解が生まれ、施設の管理に重点を置いたノウハウの教育を受けた管理者を置く施設が多くなっているのかもしれません。

次に、その様な施設への行政側の役割についてですが、まず、管理・運営と方針決定については、現場管理者に任せ、行政は支援に徹するということです。要するに、口出しや介入は、原則しないと言うことです。しかし、行政側にも重要な役割が二つあるだろうと言うことになりました。一つは、優秀な管理者への評価・報酬を適切に行うことです。評価さえも行っていないところや、適切な報酬等の手当てを行っているところは非常に少ないのが現実のようです。たとえ今成功している施設でも、いつまでも管理者本人の「やりがい」だけに頼っていると将来はないように思います。また、成功事例をモデル化して、拡大展開することも困難でしょう。二つ目は、施設で育った人や事業が、地元に定着してくれるような魅力ある(ビジネス環境や生活環境を含めた)地域社会づくりを行うことです。地域活性化が、どんどん進んでいくと、行く着く先は「地域間競争」だろうと言うことです。従って、いくらインキュベーション施設が成功しても、そこから巣立った優秀な人材や事業体が、より魅力のある他の地域に流出してしまうという悲惨な状況も起こり得るわけです。もちろん、その前に優秀な管理者の流出も考えられます。

このシンポジウムが、施設管理者や行政側の役割についての見直しの切っ掛けになってくれればと願っています。