当研究室のHPでは、テレワークが普及することで実現する社会のことを「知識社会」、「価値社会」、「ネット社会」などと呼んできました。しかし、これらの名称は、一般的にテレワークとは独立して使われている上に、それぞれに固定観念や誤解があるように思われます。例えば、「知識社会」では、「知識」が「モノ」よりも重要であるとか、「知的財産」が全てに優先するとかというイメージがあり、「価値社会」では、「価値」の有無や、高低で差別化されるというイメージがあります。また、「ネット社会」は、インターネットを中心としたインフラ重視や、デジタルディバイドなどのネット利用技術の格差による差別化の問題があるとなっています。これらのイメージは、新社会の本質からは、遠く離れたものと言えるでしょう。

一方、テレワークも既に誤った固定観念を持たれており、ワーカーの為の新しいワークスタイルというイメージを持たれています。実際に、90年代後半までは、ワーカーのオプションとしてのテレワークばかり語られてきました。また、多くのテレワーク研究者もその様な発言を繰り返していました。フルモバイルワークの出現により、テレワークが経営戦略として有効であることが証明されましたが、それでも、内勤者に対するテレワークの適用は、まだワーカーのオプションという見方が圧倒的です。その為に、当研究室で提案しているテレワークの普及による組織改革、そして、社会構造改革まで達成しようというアイディアは、なかなか理解してもらえないのが現実です(ただし、ここ1年くらいで、私の提案に真剣に耳を傾けてくれる組織が、幾つか出ていますので、この談話室でも追々紹介していきたいと思っています)。

その様な事情から、テレワークに代わる新たな名称が必要と言われていますが、実は、9年前から新名称については検討して来ました。しかし、なかなか良い名前の候補が出て来ないのです。企業によっては、「e-work」や「new work way」と呼んでいるところもありますが、workという言葉を使い続ける限り、ワーカーの為のものというイメージは付きまとうことになります。テレワークに取って代わる名称はまだまだ出て来そうにもありません。

ところが、良く考えてみると、テレワークは、あくまでも手段であり、目的・目標ではありません。従って、テレワークが普及することで実現する新社会、つまり、目標とする社会の名称を決めることを優先することにしました(半分言い訳ですが)。そこで提案する新社会の名称がORS(Open Resource Society)です。ここで言うresourceとは、管理の対象となる人・モノ・金・施設・情報などのあらゆる資源を指します。それらのresourceがopenなsocietyとは、資源の共有化が進んだ社会のことです。従来の社会では、資源の囲い込み、隠蔽、意図的な歪曲が日常的に行われており、それらを大規模で行える組織・個人に利益と権力の集中が起きています(その逆とも言えますが)。新社会は、これらの悪習を打ち破ることで実現すると考えています。打ち破るためのツールがテレワークであり、その結果実現する新社会がORSです。

ちなみに、勘違いされないようにハッキリさせておきますが、ORSにおける資源の共有化は、全ての資源を共有化するという意味でもなく、無条件・無料の共有化という意味でもありません。ORSにおいても、組織・個人への資源の帰属は認められますし、正当な理由があれば、共有化の拒否も認められます。ただし、その場合においても「資源の所有の隠蔽」はしないことが原則です。現在の社会における腐敗、非効率さ、不公平さは、「資源の所有を隠す」ことに起因していると考えられますので、ORSでは「隠す」ことが最大の社会悪とします。ORSにおける資源の共有化については、次回以降に説明していくつもりです。